ながい毛がしらが 種田山頭火
親戚のお婆さんに「お千代さん」がいた
一つ屋根の下に住んでおり
というよりも 同居
曾祖母の一番下の妹です
曾祖母は私が産まれる前に亡くなっており
知らないお人
お千代さんはワタクシが
最も親しんだお婆さんです
その昔は日本舞踊の男踊りの
名手であったとか
抜き襟の粋なお婆さん
お千代さんの顎には
長〜い1本の白髪がありました
4cm位の
しかも1本だけ
ワタクシはいつか抜いてやろうと
目論んで 何度か挑戦
寝てる間に引っこ抜こうと
試みましたが
顎に触ると目を覚ましました
お千代さんは
ワタクシに言いました
余計なことだと
「これは福白髪と言ってな、
宝だから抜いたらいかん」
子供のワタクシは
抜かずに切ってやろうかとも
思ってましたが
ああ、1本の長い白髪の
お陰で食うに困らぬ
幸せなお人なんだと
子供心に悟ったのであります
お千代さんは60歳を過ぎた頃
廊下から庭に
転げ落ちて脚を骨折しました
今のようにリハビリのない頃で
寝たきりになりました
寝たきりになっても
ぼけることもなく いつも明るく
賑やか好きで 肝の座ったお千代さん
山頭火の「ながい毛がしらが」は
お千代さんの
1本の長い白髪のアゴヒゲ
お千代さんはワタクシが
高校2年生の時に
老衰で亡くなりました
83歳でした
眠ったままの大往生だと
父が言ったのを憶えています
1本の長い白髪のアゴヒゲは
笑みをたたえた遺顔に
残ってました
山頭火の句は
日常に密着している句も多く
ただの喋り文句な句に
最後は納得させられ
お千代さんの思い出に
繋げてくれる
「ながい毛がしらが」
お千代さんに繋げたオハナシでした
おそまつさまで